防災プロデューサー永田宏和氏に聞いた『伝わる防災への道』

ハート防災Jです。防災の世界では知らない人はいない(らしい)永田宏和さんにお会いしてきました。

防災素人の私は知るはずもなく、お恥ずかしい限りですが(汗)。

永田さんは、「防災をもっと身近に、もっと楽しく。」家族や友達と楽しみながら防災知識が身に付くイベント「イザ!カエルキャラバン!」を運営するNPO法人プラス・アーツの理事長。

防災プロデューサーとして日本全国、最近は東南アジア・中南米と、世界を飛び回ってる凄い人なんです。詳しくはこちら

NPO法人プラス・アーツ http://www.plus-arts.net/

イザ!カエルキャラバン! http://kaeru-caravan.jp/

 

取材した1月28日は、「イザ!美かえる大キャラバン!2018」(神戸市のJICA関西にて開催)のイベント当日。

2005年に神戸で始まった防災イベント「イザ!カエルキャラバン!」は、今では日本各地で開催されるようになり、今年でもう13年目です。

そのきっかけ、道のりについて聞いてみました。

永田さんは敏腕プロデューサーというより、優しいお父さん、といった印象。

 

防災に活きている、ブランディング と まちづくり のノウハウ。 

「大学卒業後、ゼネコンに就職したんですが、まちづくりに興味があって、独立して店舗建築や立ち上げの仕事を個人で始めました。店づくりには、ネーミングやロゴ、看板、ホームページなど、店をどう伝えるか、ブランディングが大事。まちづくりでは、おじいちゃん、おばあちゃんに揉まれたことが大きくて、本音の部分でコミュニケーションできないと相手にしてもらえませんから(笑)。ブランディングとまちづくり、その2つを足したのが、プラス・アーツの防災です。」

やっと自分の番が来た!

「2005年に震災後10年の記念事業で声が掛かり、それがすべての始まりでした。1995年の震災当時は、ゼネコンで働き始めて2年目の時、実家も被災し、当時まちづくりにも関わっていたので、自分も現地入りして役に立ちたくて志願したのですが、叶わなかったんです。みんな神戸に駆り出されて、ノイローゼになる人もいて、でも自分は行けない。ボランティアで出向きましたが、たまに行くだけでは役に立たないんですよ。正直しんどかったです。だから、この話が来た時には、やっと自分の番が来た!という感じでした。東日本の時も同じような思いの人がいたのでよく言いました。10年目でも関われる色んな関わりかた、やり方、役割がある。忘れてかけている時こそできることがあると。

大きかった寄藤文平さんとの出会い。防災が伝わるように。

「2005年のイザ!カエルキャラバン!のために、170人近い被災者にインタビューしたんです。その後、そこで集まった防災の教訓や知恵、技を本にまとめようというとき、イラストどうしようという話になって。ブランディングの仕事をしてる時(今でもやってますが)に見たデザインの本で寄藤さんのイラストを見て、一度は一緒にしたいな~と考えていたのを思い出して、そこから猛アタックです。何度も断られましたが、最後は粘り勝ちでした(笑)。」

「彼のクリエイティブの力で大きく変わりました。防災が伝わるようになったんです。寄藤さんのデザインはグローバルだし、デザインだけでなく企画もされるので、アイデアがどんどん広がっていくんです。そのアートな発想と創造力は、防災を伝える上で欠かすことができません。コピーライターの岡本欣也さん、建築家の曽我部さんも同様です。防災という難しい課題を一緒に乗り越えてくれる仲間との出会い、それがプラス・アーツの活動を支えています。出会いというか、無理やりですけど(笑)」

神奈川大学曽我部研究室で取り組んだプロジェクト。 新聞紙を使ったシェルター「ワッフルドーム」の制作動画はこちら

「楽しみながら、しっかり学ぶ」 防災の専門でないことが良かった。

「2005年に声が掛からなければ、防災の仕事はやっていなかったと思います。防災もまちづくりのひとつなんです。イザ!カエルキャラバン!は、地域の防災訓練プログラムと、美術家の藤浩志さん(プラス・アーツ副理事)が考案したおもちゃ交換会「かえっこバザール」を組み合わせた防災イベントです。そのベースにあるのは、被災者から集めた声でした。防災というと、難しい、硬いイメージが先行するところを、いかに楽しみながらしっかり学ぶようにできるか。このしっかりが大事なんです。開催当時は、おちゃらけてるとか風当たりも相当きつかったんですよ(笑)。でも、自分には170人近い被災者の生の声があり、信念もあったので迷うことはありませんでした。。防災の専門でなかったことが、逆に良かったのだと思います。防災に対する既成概念がありませんでしたから。」

災害はいつもそこにある。より日常にするため

静岡は未被災地ですが、地震に対する防災意識は高く、ハード面も充実してるし、頭の中にはある。でもリアルじゃないし、行動に結びつかない。文化やアートの力で防災に光をあてようというのが、HEART防災の取組みなのですが、永田さんはどう思われますか?

「今、『災害イツモマインドセットPROJECT』をやっていて、起こしたいのはムーブメントなんです。それに近い話かなと思います。普段の生活の中では考えることのない防災を、より日常的にしていくという考え方。災害はいつもそこにある、という、マインドそのもののリセットができないか、と取り組んでいます。ららぽーとで実際にやっていますが、普通に買い物に行ったら、家具転倒防止やローリングストックのコーナーがあって、防災グッズがあり、ゲームにふれあい、自然と学べる環境が大事だと思います。」

詳しくはこちら http://saigai-itsumo.com

伝える側が、あの手この手を持っていないとダメ。静岡でBOU.LEAGUEとかやって欲しいな。

「仕事の依頼のほとんどは、企画から考えて欲しいというものです。以前、陸上の朝原さんと神戸市消防局と組んで企画監修したBOSAI五種競技という、スポーツの要素を取り込んだ5つの防災プログラムがあって、その企画が今、BOU.LEAGUE(防リーグ)という形で行われています。防災意識が高い静岡でやったら面白いし、もっと身近になると思いますよ。やっぱり、伝える側があの手この手を持っていないとダメですね。そういえば、静岡で脱出ゲームとかやってましたよね。凄くいいと思います。」

BOU.LEAGUE(防リーグ)はこちら https://bouspo.jp/

これからは担い手を増やすことが柱になっていく

「企画や監修の仕事もありますが、これからは防災プロジェクトの担い手を増やしていくことが中心になっていくと思います。全国に現在2万人の講師がいて、カエルキャラバンも伝授しています。教える側を育てる事が、防災をもっと身近に楽しく伝える事に繋がります。それは海外も同じ。アートな発想、創造力で、どこまで広げられるか、挑戦ですね。」

 

永田さんのお話は、難しい言葉は何ひとつなく、防災素人の私にもとても分かりやすかったです。プラス・アーツが扉を開けた「伝わる防災」が「いつもそこにある防災」へと繋がり、大人から子供まで防災知識が自然と広がることで、いざという時の備えが整う社会に変わっていく、そんな可能性を大いに感じるお話でした。

静岡の防災には、楽しくしっかり防災の、”楽しく”をもっとプラスしていく必要があるかもしれませんね。

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